ツール・ド・ティモール体験手記
(東ティモール寸景)
ラモス・ホルタ大統領の激励を受け、いざ出発!
今年も五日間のマウンテンバイクのステージ・レースであるツール・ド・ティモールに参加しました。今年は、マウンテンバイク・オリエンテーリング(地図とコンパス片手にゴールを目指す自転車レースだそうです)の世界チャンピオンや、10月に豪州キャンベラで開催されるマウンテンバイク24時間耐久世界選手権に出場する多くの選手らの参加もあり、トップ集団では毎日レベルの高いレースの駆け引きが展開されていたようです。
もちろん300名を超える出場選手の中には、僕のように、派手な転倒を避けてレースを楽しむことを目標にした選手、完走することだけを目標にした選手、坂道では迷わず自転車を降りて歩くティモール人選手、毎日棄権してしまう選手もいて、去年以上にいろいろなレベルの選手の参加がありました。
初日は、海岸沿いの(ティモールの道路にしては)穴の少なく平坦な道路が続くコースで、最後に14キロの上り坂があるものの、五日間の中では一番走りやすいコースでした。僕も張り切って最初から飛ばしていき、最後の登りで苦しんだものの5時間17分でゴールしました。スタート前に世界選手権に出ると話していた選手2人よりも良いタイムだったこともあり、一瞬、僕も来月の世界選手権にエントリーしようかなと妄想してしまいました。これがどれだけ大きな勘違いだったのか後ほど思い知ることとなります。
うそのような話ですが、このステージでは、一人の選手がヤギと衝突して鎖骨を折り、病院に運ばれていきました。以前、同じ道で僕も突然飛び出してきたバッファローと正面衝突しそうになり自転車のハンドルを折る転倒事故を起こしています。道路のコンディションが良くても、バッファロー、ヤギ、豚、犬、鶏等々がいつ飛び出してくるかわからないドキドキ感は、ティモールのレースの大きな魅力かもしれません。バリボ近辺では猿も出ました。
初日は、スタート選手総数310名中、途中リタイヤ54名(うち国連選手4名)、10名が点滴を受け、1名がヤギと衝突で病院行き、夜に入ってから気を失った選手1名、さらに夜中には、国連チームのメンバー1名が極度の脱水症状に陥り、ヘリコプターでディリに緊急移送されるという過酷なステージでした。
二日目と三日目は、ティモール名物の悪路、未舗装路、獣道、裏道、抜け道、山崩れ・土砂崩れ道、凸凹道、道とは言えないだろう的な道を存分に楽しむコースでした。二日目のコースは、最高でボボナロの山を1500メートルまで登り高原の景色を楽しんだあとは、ジャングルのような熱帯雨林を下りスアイまでいくもので、三日目はスアイからアイナロまで30キロの平坦な道で油断させておいたあとは、15キロに渡り延々と登りが続くコースでした。多くの選手が転倒して怪我をしたり、自転車を傷めたりしていました。去年、同じような悪路を何度も転げ落ちて痛い思いをした僕は、今年はとにかく、転ばないように、ゆっくり安全運転で切り抜けました。二日目の途中リタイヤは56名、三日目はちょっと減って17名。
四日目は、アイナロからアイレウまで、本レースの最高峰、標高1800メートルまで20キロも続く登りを含むアップダウンの激しいコースでした。途中から雨、霧にも見舞われ、僕は連日の疲れが重なり完全に疲れきってしまい、とにかくゴールだけはしよう と弱気な目標を密かに掲げ、なんとか耐えました。結局、五日目のアイレウからディリの短いステージでも疲労が全く抜けず、またなんとか耐えて耐えて、やっとの思いでディリにたどり着いたという感じでした。五日間のレースに出るには、完全にトレーニング不足だったようです。4日目のリタイヤは14名、最終日は5名。
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疲れたときの最高の励みになったのは、沿道の応援でした。去年に引き続き唯一の日本人選手としての参加だったのですが、たくさんの日の丸での応援がうれしかったです。来年こそは、邦人の皆様、是非ツール・ド・ティモール、参加してみてください。
伊東(UNMIT)
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