北原大使挨拶

 

「動けません」

麺の道

 

 麺の道と言っても、絹の道(シルクロード)とは全く異なります。
  麺とは、あの縮れた日本のインスタントラーメンの麺を想像して下さい。

 

 当地で活躍している日本のNGOのひとつに「SHARE(国際保険協力市民の会)」があります。
  麺の道は、そのホームページに寄稿されている当地コーディネーターの吉森さんのスタッフ日記「麺とお粥」(2010年6月1日付)から引用させていただいています。
  この国の道路事情を言い得て誠に妙です。是非御一読なさってみて下さい。

 

 東ティモールは、全国土面積が岩手県ほどの小さな島国。その中心を東西に標高2,960メートルのラメラウ山を筆頭に高い山が連なる険しい地形となっています。

 

 海岸に沿って走る東西道路と急斜面に沿って走る南北道路など、総延長は約6,000キロ。
  そのうち国道は、およそ1,360キロと言われています。
  でも、日本の国道をイメージされるとビックリされるかも知れません。自らの実感としては、思わず「酷道」という当て字が浮かんで来ます。

 

 走行距離に数倍する所要時間と危険、そして4輪駆動「首振り全身マッサージ機」に座り続ける疲労感も。

 

 国道とは言っても、まさに何でも有り、ほとんど「ゲームの世界」です。
  ・・・・・・倒木、陥没、土砂くずれ、落石、冠水、泥沼、橋の落下、渡河、ヤギ・ブタ・イヌ・ニワトリ・水牛等の出現そして道路の保守整備・復旧の遅れ、ディリ市内以外信号は全くありません・・・・・・
  これが東ティモールの国道です。

 

 この国の国民にとって、命にかかわる1番の脅威は道路なのではないかと思ったりもしています。

 

 当国政府も、こうした状況に手をこまねいているわけではありません。
  国家最優先課題のトップに位置づけ、力を入れ、わが国も重点的に支援を続けて来ています。

 

 当国国民の日本国民に対する感謝はとても大きいのですが、この国の国づくりにおけるしっかりとした道路政策の策定・実施が求められます。
  また、わが国としても、わが国の国益を踏まえ、この国の将来を見据えた対応をして行かなければなりません。

 

 東ティモール国民の命をつなぐ道路は、日本国民と東ティモール国民の心をつなぐ道路でもあります。
  両国は新しい時代に入ろうとしています。

 

2010年8月2
在東ティモール日本国大使
北原 巖男

 

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