文化交流タイム
「Cast Away」という映画をご存じですか?トム・ハンクス主演の映画、簡単に内容を説明します。
Fedexで働く主人公はバリバリのサラリーマン。ある日彼がのったFedexの飛行機が墜落、彼は無人島に流されてしまいます。一緒に乗っていた人は事故で死に、彼は無人島で1人の生活を強いられることに。ヤシの実をどうやって割るのか、魚をどうやって捕まえるのか、どうやって火をおこすのか、そして、どうやって孤独と戦うのか・・・。現代世界から原始時代にやってきてしまったかのような状況を彼は知恵を絞りながら、また、偶然に教えられながら必死に生きるのです。無人島生活を始めて4年、とうとう彼は自分で作ったボートで島を脱出、元の世界に戻っていきます・・・。
この映画を日本で見た時、何も感じませんでした。単調な映画だなぁと思いました。でも、ティモールでの暮らしを経験した今、私のこの映画に対する見方は180度変わっていました。「こういう時、ティモール人だったらああするのに・・・。」「それはこうしなきゃダメなんだよ!トム!」ここで地元の人達と共に暮らし、彼らの生活の知恵を見てきていることで、私にも多少知恵がついているのでしょう。(もちろん、自分で出来るのかはわかりませんが。)
私はこの映画を是非ティモール人と一緒に見たいと思いました。彼らの目は、映画から何を見出だすのか知りたいと思ったのです。ある日、スタッフの何人かを誘って一緒に見ていると・・・、トムが飛行機事故にあって島に流されるシーン。島が映し出された瞬間、「なんだ。ヤシの木があるじゃん!全然オッケー!」隣で見ていた私は思わず吹き出しました。本来ならこのシーンは「あぁ・・・こんな島に流されちゃったんだ!この先どうするんだろう!?」という不安の気持ちを掻き立てるもののはず。でも、この人達の目線はやはり特別。それから、ヤシの実を必死に割ろうとするシーン。トムは外側の固い皮をやっとの思いで取り、皮の薄くなった所でヤシの実を石に叩きつけてしまいます。 「あー!バカだなぁ・・・。それじゃあ中のジュースは全部こぼれちゃうじゃないか!」真剣にトムの身になり、映画に入り込んで彼にアドバイスをします。ボートで脱出するシーン。激しい雷と雨の中、必死でボートを漕ぐトム。「こんな雨の中、最悪じゃん。こんなことなら、俺ならもうあの島に住むな。」私は思わず、「えっ、マジで??」「そうさ。こんな嵐の中、なんで命かけて出ていくの?」・・・。
他にも色々なコメントがありました。映画鑑賞の時間すべて、私にとって文化交流の時間でした。最後に、私が一番「なるほどー!!!さすが!!!」と思ったコメント。それは、トムが島を脱出して海を漂流するこんなシーン。“夜ボートで寝ていたトムの近くにクジラの群れが来て潮を吹き、クジラが海から顔を出してトムを見る。しかし、クジラは何もせずそのまま静かに海に帰っていった。次の日カンカンに晴れた昼、トムは漁をして空腹を満たした。そしてその晩、トムは激しい嵐に見舞われる・・・。”私の見方は、“海を漂流していた時、クジラに出会ったこともあったし、お腹がすいたら自分で魚を取って食べて生き延びた。激しい嵐に見舞われ、ひたすら耐える日もあった。漂流生活は本当に厳しいものであった”です。皆さんだったらどう思うでしょうか・・・。このシーンを見ていたアフメットのセキュリティーさんは、トムが嵐に見舞われたシーンでこんなコメントをしました。
「あぁ!さっきクジラがこの人間を見つけた時、クジラは何の危害も加えなかったのに、この人間が漁なんかして小さい魚を殺したから、さっきのクジラが怒って嵐を起こしたんだ。あれは海の神様だったんだよ。」
私は思わず、嬉しくなってしまいした。そこに東ティモールの文化をはっきりと見たような気がしました。なるほど、とってもティモールらしい見方。自然の中に神を見出だす。海や大きな木、石、川、山・・・。全てのものには魂が宿っているのです。
私はこの映画が大好きになりました。日本で見ただけじゃ分からないかもしれない。でも、今の私にとってこの映画が放つメッセージは大きなものでした。日本から離れてみた今、見直したら別のメッセージをくれる映画は他にもあるかもしれません。また発見できたらいいなぁと思います。
ちなみに、この映画を見おわった後スタッフから「このDVDを是非譲ってくれ。」と申し出がありました。とっても気に入ったから、近所の若者たちにも見せたいと。ティモール人にも気に入ってもらえて、私もとっても満足した文化交流タイムでした。
渡邉(AFMET)
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