大好き!
都市の人たちに比べて暑苦しいほど熱い田舎者。荒っぽくて頑固で古臭い、でも自分たちの故郷に誇りを持っている。そんな印象を受けるロスパロスの人たち。首都で外国人も多い、死語かもしれないけど「ハイカラ」っぽいディリに住んでいる人たちを見るとロスパロスとは全然違う空気を感じます。そう、一言で言うと「野蛮」なんだ、と考えています。野蛮→文化が開けていないこと。無教養・無作法で荒っぽいこと。ちなみに、私は良い意味で「野蛮」を使いたいと思います。
先日、ディリでの仕事が長引いてしまったためにアフメット車ではなくスタッフと2人でバスでロスパロスに帰ることになりました。久しぶりのバス。研修で初めてここを訪れた時に、本当にロスパロスに着くのか不安に駆られながら乗った時以来でした。ターミナルは無いわ、走る時間はめちゃくちゃだわ・・・。シートを予約してもバスが通った時そこで待っていなかったらアウト。冷たく素通りです。荷物も人間も山積みでとても心地よいバスではありません。研修生の時まだテトゥン語が話せなかった為に、とにかく途中でトイレに行きたくならないようにと水を飲まずにバスに乗りました。入口に高く積まれた米に戸惑うと、「いいから踏んで上がって!」とジェスチャーで言われ、なんとか座席を確保。満員の人に驚きながらロスパロスに向かいました。この時、水を飲まなかったことが原因で、私はアフメットに着くまでカラカラに乾いたのどを、偶然持っていたミカン1つで必死に凌ぎました。夜中にアフメットに着き、一言目に「こんばんは!お水ください!!!」と言ったのが私のこのバスとの最初の思い出、そして出会いでした。
さて、この日私たちが乗ったバスは、ちょうど地方選挙と時期が重なっていわゆる帰省ラッシュで、「そんなに乗れんの?」とつい呟いてしまうくらいの人が押し掛けていました。私たちは、前日全てのバスに満席だと断られ帰れなかったため翌日のバスのシートを予約していたし、タイミングよく待ってる所にバスが来たため一番前の席をゲット。といっても、私たちが待っているのを発見したコンジャック(呼び込み係)の男の子が、「あ、先に予約した人が来たから、あんたはどいてくれ。」と私たちの席(と思われる)に座っていた人を無理やりどけてのシートゲットとなったためなんとなく気まずい感じはしましたが(笑)席に座ろうとすると後ろから、「あ、サトコさ~ん!」とアフメットのスタッフ、ロザさんの娘が座っていました。「クリスティナ!帰るの?」「そう、帰るの。サトコさんも?てゆうか、バスの中暑すぎー・・・!」(笑)なにはともあれ、座席確保。こうしてディリからの長い長いバスの旅が始まりました。
「オイ!もっと奥に行けよ!」「やめろ!押すなって!」込み合ったバスのなかは人々がそれぞれに話したり、大音量での音楽。「もう満席だ!これ以上は乗れねえな。」とコンジャックは押しかける人々を押し返しながら、「アタウロ行き、アタウロ行きー!」(※アタウロはディリから船でしかいくことが出来ない島です。)コンジャックのジョークに乗客たちが笑います。ディリ市街を横切り、いざ出発!「イヤッホーウ!出発だ!もう席は無いよー、残念だな。バウカウで降りる奴は立ってろよ。ファタルク語がわかんね―奴は立ってくんだな。」(※バウカウはロスパロスの手前の町で、ロスパロスの言語であるファタルク語は話されていません。)「もう乗れないって!お前ら降りろ!誰のかわかんねーカバンはここで下しちゃえよ。」「オイ!それ俺の荷物!」「乗るって言ったら乗るわよ!あたしの荷物、もう積んであるんだから!」・・・てゆーか、あたしたちって、“お客様”、じゃないの?(笑)往々にしてそうですが、ここの人たちには“お客様は神様だ”という言葉は通用しません。“乗りたきゃ乗れ、文句言うな。”、“乗りたくない奴は乗らなくて結構。”と言う方が多い気がします。乗るの乗らないのでさんざん大騒ぎした後、いざロスパロスへ!いつも感じることですが、ディリを出てロスパロスに上がっていく時、ワクワクします。「さあ!ロスパロスに帰ろう!」と。バスに乗ってるのはみんなロスパロス人で、ディリにいるけれどバスの中はロスパロスそのもの。なんだか私もその中にいることができてとてもうれしいのです。
酔い止めのために窓際の席ゲットしたけど、ドアにつかまって立ってる人が多すぎて窓の外の景色は間近の人の顔・・。ま、いっか。呼び込み係の少年が、トロトロと歩いているヤギに、「ヤギの奴め、轢かれてぇのか?」とか、道端に座っている女の子達に「おねぇさん、ガードレールのつもりか?」などとヤジを飛ばすのに笑いながら。急にバスが停車してバック。「何?」と聞くと荷物が落ちたらしく、「オイ!荷物拾って来い!」と運転手のオジサン。再出発。足かけてる所がエンジンの熱でアチチ!窓際に足を投げ出して寄りかかると、背もたれにつかまっている手に髪を引っ張られてイタイイタイ!!「オイ!オマワリだ。上に乗ってるやつはかがめー!」・・・(笑)
日本じゃ、もうこんなことはできないだろうな。いや、100パーセント無いな。なんだかんだ、魅力のあるこのバス。他のNGOの日本人スタッフさんに「アメイジングバス」と名付けられているこのバス。乗り心地はもちろん最悪。お尻は痛いし狭いから足延ばせないし。タバコの火を座席の横にこすって消す乗客はいるし。でも、私は何となく・・・初めて乗った時からこのバスが好きなのです。派手なデコレーションやペイント、スピーカーが壊れていても気にしないで流れる音楽、大量の荷物に口の悪い呼び込みの少年と運転手。「オイ!兄さん!音楽かけてくれよ。もっと音量上げて!聞こえねーよ!」バスに揺られながら、なんて野蛮な空気のなかにいるんだろう!私は。でも、その野蛮さの中にある温かさ。同じ故郷へ向かう人々。窓際に田舎の風景と、口の悪さと裏腹な少年の幼いチャーミングな顔を見ながら、なんだか温かい、楽しい気持ちになるのです。それって、私は田舎好きってことなのかな?力強い男たちとその誇り。大袈裟かもしれないけど、私にとってこのバスは強さと優しさ、そして誇りが詰まったとても魅力的な存在なのです。
ちなみに、このバスはお客様一人一人のお願いを運転手の意向で取り入れたり入れなかったり。「俺、魚を土産に買うから止めてくれ!」「おう、魚食って帰るか。腹減ったやつは挙手!」「うぉぉぉー!」、それを聞いて、「え。もう近いんだからそのまま帰ろうよー。」という意見も。心の中で(帰る方に賛成!)と思いましたが、その意見は見事に聞き流されました。バスを止めて魚、魚・・・。レストランのおばちゃんが「今日はもう魚ないわよ。」すると、「え!?無いのかぁーーーー!!なんで無いんだよ!無いなら店開けるなよ~。」がっかりしてみんなバスに乗り込み、魚が無いことにぶーぶー言いながら、さ、じゃ、家に帰るか!
見慣れた風景、私たちの地ラウテムの美しい海を横目に過ぎ、ロスパロスまであと少し。バスは、乗客全員をそれぞれの家に送るサービスをしてくれます。最後に降りる人にとっては悲惨なサービスですが。。。
最後になりそうな予感がしたので、「停めて!私、ここで降りるから。」アフメットの近くを真逆に曲がろうとした運転手に声をかけました。「おねぇさんどこに行くの?」「アフメット。もう近いからここでいいわ!ありがと!」降りようとすると、「友よ、降りるのか?気を付けてな!」見知らぬ人もロスパロスつながりでとってもフレンドリー。バスから降りて歩きだそうとすると、はしって来たバイクが急停車し、「おー、サトコ!轢かれてぇのか?」と近所の若者。残りの乗客と運転手に手を振り、アフメットへ。きっと、このバス、そしてロスパロスの人達は、私のあこがれのようなものを持っているのかもしれません。歩いていると、「あらー!誰が帰って来たの!?」と向かいのおばちゃん。「ただいまー!やっと帰ってきたよ。」アフメットの前までくると、見なれた顔のセキュリティーが、「おー!やっと帰ってきたな。ヒヒヒ。ディリから歩いてきたのか?」「そうなのよ!時間かかったんだから(笑)つかれたよー!」なんだか、ホッと安心。頑固さや荒っぽさにうんざりすることも沢山ある。でもやっぱり、ここは私の帰る場所なんだ。
渡邉(AFMET)
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ラウテムの海 | バス |
立ち乗りでロスパロスまで・・・! |
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