私の見た東ティモール

 

Foti MC (メチ狩り)

 

<獲れたてのメチ>

 

 「今日はメチの日だ!何時に出る?」3月になると、この季節がやってきます。1年に1度の、東ティモールでもロロサエだけの、伝統行事の日。
 メチと呼ばれているのは「ゴカイ」という海にいる生物です。世界で他にどこにこのような場所があるのか私は詳しく知らないのですが、東ティモールの東側の海にこの時期になるとゴカイが大量に現れ、人々はそれを取りにいくのです。今年は、2月の末ごろから、今年のメチはいつだ?という話題が上がり、私もいろんな人に聞きました。漁師さんに聞くのが一番正確なようですが、あいにく私たちのスタッフの中にも、近所の人にも漁師さんはいないので、次にメチの事を良く知っている(と思われる)、おじいちゃん、おばあちゃん達に聞いて回りました。
 「あぁ、メチか。もう近いんじゃないかな?今日は、月はどんな感じだ?」「たぶん今週末だな。金曜か土曜さ。」「メチ?あぁ、金曜日じゃないかな?」「メチは土曜日だと思うがなぁ~。」「サトコ、メチにいくの?まだじゃないかな?風の向きが変わったら、メチが近い証拠なんだよ。今日はまだ風の方向が違うから・・・。」金曜か土曜。2日間にまでは絞り込めたものの、正確な日にちは分からないまま・・・。「やっぱり金曜日ですかねぇ?」なんとなく、そんな気がして金曜日に出かけようと決めかけていました。その週、お隣の女の子リタちゃんの家にお邪魔した時、「そういえば、リタもメチに行く?」「え?サトコさん達行くの?行く行く!私たちも連れて行って!」「もちろん!で、メチって金曜日なんだよね?」「ちょっと待って。ねぇ!おばあちゃん。メチはいつ?」するとそこに座っていたおばあちゃんが「あ~・・メチね。ちょっと待った。あー・・1、2、3、4、5・・。土曜日だね。」あんなに走り回っていろんな人に聞いたのに、灯台下暗し。すぐ隣のおばあちゃんははっきりとメチの日を知っていました。聞くところによると、メチの日は月をみて数えることが出来るのだそうです。夜9時になっても月が出てこない日から数えて6日、その日がメチの日なのです。リタちゃんとお父さん、それから近所のおじさん、スタッフのアジェさんと3人の子ども達、皆でメチにいくことになりました。
 土曜日の午後、私たちはゴザやお湯を入れたポット、コーヒー、インスタントラーメンなどを準備しました。浜辺でのアウトドアグッズです。隣のリタちゃんはカトゥパ(ティモール風チマキ)と茹でたトウモロコシ、スタッフのアジェさんも採れたてのトウモロコシをもって集合、皆で1台の車に乗り目指すはLore村。Lore村はアフメットの事務所のある所ロスパロスから車で約1時間半ほどの海に面した村ですが浜辺も海もとってもきれいな所です。ロスパロスの人達も多くがメチ狩りにLore村に行きます。海についてさっそく、「あーおなかすいた!!!トウモロコシを食べよう。おい!子ども達!木を拾ってこい!」アジェパパの一言で子どもたちは一斉に木を拾い集め、アジェさんはいとも簡単に火をおこしていました。以前から思っていた事ですが、アウトドアやキャンプの知識・技術に関してはローカルの人の右に出るものはいないでしょう。皮つきトウモロコシをそのまま火の中に投げ入れ、焼きトウモロコシの出来上がり。アウトドアの醍醐味を満喫しながらメチの時間を待ちました。

 

<海辺で焼きトウモロコシ!>

<メチ狩り用ボテを買うアジェさん>

 

 夜7時くらいになると、みんな松明に火をともしだします。真っ暗な海に明かりを向け、メチ探し。「まだあんまり来てないみたいだね。」「去年はいっぱいだったのに、今年はあんまり来ないのかな?」遠浅になってきた海を歩きながらしばらくメチを探しました。30分ほどして「あ、来てる来てる。」「こっちも!たくさん来てるよ!」「わー!たくさんいるいる!こっちこっち!明かり!はやくはやく!」波に乗ってたくさんのメチがやってきました。ザルならもちろん、水の中に手を入れるだけでも大量に引っかかります。アジェサンの子どもたちはキャーキャーはしゃぎながら「みてみて!いっぱいいる!いっぱい来だしたー!!」「ザルザル!早く!こっちもこっちも!」はしゃぐ子供たちをみて思わず笑顔になりました。みんな本当にたのしそう!人々がメチを呼び始めました。「ほーい!ケレケレケレケレ~!」歌うように、そこらじゅうで「ケレケレケレケレ~~!」私たちも一緒になって「ケレケレケレ~・・・」と、「おい!子ども達!うるさい!静かにしろ!俺はメチ狩りに集中してるんだぞ!」とアジェさん。みんな笑いながら、「ケレケレケレ~!キャハハハハ!」子どもたちはメチを呼び続けました。「おい!うるさいったら!ったく。・・・ホーゥ!ケレケレケレケレ~!」みんなで笑いながら、メチを呼びました。アジェさんは途中で自分の子どもから「おい!ちょっと貸せ!」とメチを入れるボテ(かご)を大人げなく取り上げていました。実は一番はしゃいでいたのは他でもない彼かもしれません(笑)海の中に集中しすぎてふと気付くと「あー腰が痛い!」。顔を上げると広がる遠浅の海にポツンポツンと燈る松明の明かり、空を見上げると満天の星空。幻想的で、思わず涙が出そうになるほど感動的な光景です。メチを呼ぶ時、みんな先祖の名前を呼びます。「オーイ、パヤコロ~!」。メチの日には、伝統行事の何とも言えない感動的な雰囲気を、思う存分味わうことができるのです。


<明かりを灯していざメチ探しへ!>

<メチ係と、明かり係>

        

 だんだんメチが少なくなって、「さ、そろそろ帰ろうか!」獲ったメチを見せ合いながら、「うわー、たくさんとれたね!これ、どうするの?」「近所や家族におすそ分けするんだ。スプーン1杯でもいいんだよ。薬だから。年に1度食べると健康にいいんだ。」私は、とったメチをその場で、そのまま食べるのが一番好きです。そうめんみたいにチュルチュルっと。でもみんなはメチを持ち帰ってニンニクとレモン、それから塩を入れて保管します。トウガラシを混ぜたりもします。人々曰く、生でも冷蔵庫無しで1か月くらいは大丈夫とのこと・・・(本当かな!?)この時期、村でお食事をいただくと付け合わせとしてメチが食卓にあがることもしばしばです。

 

<ニンニクレモン和え>

<カトゥパとトウガラシと・・>

              

 アフメットに戻ってさっそくニンニクを刻み、レモンと塩を入れてみました。残ったカトゥパとトウモロコシを添えてセキュリティーのティトさんに「メチ、味見してみて。どう?」「うん、おいしいよ!」私たちもカトゥパに少し乗せて恐る恐る・・・、うん、以外とおいしいかも。こうしてメチ狩りは終了。カワイイ子ども達と伝統的な時間。充実した土曜日がおわりました。大量のメチは食べきれないためスタッフさんに少しずつおすそ分け。今年もみんな健康でありますように!

 

 

<今年のメチ狩りメンバー>

 

 

<Loreの海にて!>

渡邉(AFMET)

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