我が大使館の前は海です。道路を隔てて椰子の木、砂浜があります。
当地は11月から4月頃までが雨期に当たり、この時期突然の降雨や、河川からの流水の影響で海も濁っています。また、水着の女性もいませんが気分はリゾートです。この浜辺には、夕方から焼きトウモロコシ、焼き魚、ビールなどをだす店-と言っても、テーブルとイスだけですが-が建ち並び、夕方頃からお客さんの車が路上に止まりますので、渋滞が起きます。
今回は、この大使館前のおしゃれでない海辺のカフェをご紹介します。 飲み物は、ビールとソフトドリンク全て輸入物です。発泡スチロールの箱に氷と一緒に入れてあり、冷たく冷えています。
残念ながら当国ではビール、ソフトドリンクを生産していませんが、マンゴーやバナナ等フルーツはありますので生ジュースは可能です。しかし、この店には電気・水の設備はありませんので生ジュースは売っていません。たとえ売っていても飲むにはそれなりの覚悟が必要になるかと思いますが---。
以前勤務したマナオス(*アマゾン河の真ん中あたりにあります。)にも河辺にカフェが立ち並んでいますが、そこではビール(生ビールもありました。)の他にサトウキビからつくられたピンガ(焼酎)がよく飲まれていました。当地にはピンガにあたるような地酒がなく(筆者が知らないだけかも知れませんが)、ウィスキーは輸入物で30~50ドルはしますので、国民一人あたりのGDPが400米ドルに満たないこの国の庶民にとっては、やはりビールなのでしょう。周りにはビールを飲んでいる人はあまりいませんが、焼き魚や焼きトウモロコシを持ち帰る人は多くいます。やはり、ここは「消毒」のためにアルコールが入ったビールを飲むことにします。
食べ物の「焼きトウモロコシ」は、スイートコーンではありませんが、化学肥料を使っているとは思えませんので、たぶん有機栽培です。また、歯ごたえ十分です(ある出張者はあごが痛くなったと言っていました)。
「焼き魚」は、すぐ目の前の海は汚れているので、少なくともこの近くで捕れた魚ではない信じていますが、色も熱帯魚のようで名前はわかりません。
串に刺したき火で焼き、仕上げに何かソース(?)を塗ってできあがりです。味は、なかなかいけます。
でも日本人としては醤油をつけて食べたい、と思うところです。
そのほかに、「焼き鳥」、「焼きソーセージ」を売っていますが、主力商品ではないようです。ご飯をちまきのようにした「カトゥパ」の人気は高いようです。魚、トウモロコシ、ちまきにビールを付けて、締めて4ドル(*東ティモールでは米ドルをそのまま使用しています。)で、うち半分はビールの料金です。ロケーションは最高、サービスは???、で納得のいく安さです。 月明かりの海辺でビールを飲みながら、生暖かい風に吹かれていると、何とも平安な気分になってきます。しかし、現実の東ティモールは、のんびりと潮風に吹かれているには厳しいところです。
東ティモールの平均年齢は16歳(08年世銀報告)で、20歳以下の人口が50%を超えており、日本の高齢化社会と対照的に子供の多い社会です。現在、当地の犯罪の多数を占めるのが喧嘩、投石等不満も持った若者によるものです。
独立当初は70~80%と言われていた失業率は、現在では40~50%(*若者層の数字ですが都市部では60%超と言われています。零細農業従事者を失業者とカウントしないため、全体での数字は8.9%となっています。)と推定されていますが、それでも金融危機の米国の失業率(09年1月)7.6%、日本の完全失業率(08年12月)4.4%と比べても異常に高い数字です。他方で、この国で物乞いをする子供等を見ることはありません。これほど子供が多く、かつ失業率が高いにもかかわらず、かつて在勤したバングラデシュのように路上でお金をせびられるということはありません。これは驚きでした。貧しくとも物乞いをしたり、盗みをするということはなく、この辺のお店にしても言葉が通じない外国人に対して「ぼる」ということしません(と信じていますが---)。
また、一日の売り上げも高が知れていると思うのですが、路上で携帯電話のプリペイドカードを売っている若者を多く見かけます。ペットボトルに入れたガソリンを道路際で売っている人、天秤棒に野菜、果物をぶら下げて売り歩く人等も目につきます。
農業が労働人口の約80%を占め(GDPの1/4が農業)、産業の少ない東ティモールでは、若者が就労年齢に達するたびに失業率を押し上げ、空気を圧縮するように社会不安を増加させていきます。物乞いをぜず、盗みもしない東ティモールの人たちが、この社会をいつまでも続いけていくことができるのか、と思ってしまいます。話がくらくなってきましたが、あたりはもっと暗くなってきました。月明かりと車のヘッドライトを頼りの商売です。懐中電灯を持ってくれば良かったと悔やまれます。
ビールも飲み終わりました。そろそろ夜風に吹かれながら帰ることにします。
(沢内)
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