館員の見た東ティモール

 

東ティモールにおける政務的生活(その8)

 

【東ティモールよ、君に幸せあれ!】

 

 本コラムを執筆させていただいてから、今日で丁度2ヶ月が経ちます。いよいよ私も東ティモールを離任することとなりました。とても残念です。本コラム掲載中に多くの方々から本稿の掲載を毎回楽しみにしています、早く次号を掲載して欲しいとの嬉しい励ましのお声を頂戴しました。これまでに拙い本コラムをご愛読いただきまして本当にありがとうございます。今回は東ティモールでの生活を締めくくるにあたり、恥を忍んで東ティモール在勤中の珍喜劇を披露いたします。

 

珍喜劇(空飛ぶラバデウス)

 当地に赴任して間もないある日のことです。ある外交団が主催した野外レセプションでの一コマです。今、私の目の前で当国の政府要人がスピーチをしています。出席者の皆さんは直立不動のままスピーチに耳を傾けています。突然、目の前が暗くなりました。一瞬の出来事なので何が起きたのか判りませんでしたが、私の眼球と眼鏡の間のわずかの空間に異物が紛れ込んだのだけは確かです。「?#&$!。」あやうく大声で叫びそうになりながらも、口を押さえながら慌てて異物を取り除きました。するとその異物が今度は私の前に立っている別の人の足下からゆっくり背中に向かって登っていくのでした。今度はその様子を見ていた私の隣の人が「?#&$!。」していました。

 当地に赴任して2年が経過したある日のことです。レストランで友人等と夕食をとっていた時です。丁度話が盛り上がったその時、またしてもその異物が今度は私の額に飛び乗ったのです。「おわっ!」今度は大声を張り上げて一同大爆笑でした。私はその異物が空を飛ぶ生き物だと言うことを初めて知りました。何とその生き物とは、テトゥン語でラバデウス(Labadeus)と呼ばれているカマキリだったのです。

 

珍喜劇(東ティモールでサーフィング?)

 当地に勤務している外国人の多くが経由地であるインドネシアのバリ島を訪れます。日本は多くの観光客がバリ島を訪れますが、東ティモールまで足を伸ばす方は多くありません。東ティモール政府は将来多くの観光客が東ティモールを訪れることを願って観光誘致に力を注いでいこうとしています。観光に限らず東ティモールの魅力については私だけでなく他の館員のコラムを読んでいただければおわかりになろうかと思います。

 さて、バリ島で休暇を過ごしていたある日、ぽっかりと空いた午後の時間。以前、友人がバリ島で初めてサーフィングをしてボードに立てた話を思い出し、勇気を振り絞ってたった一人でサーフィング教室の門をくぐり初心者コースを申し込みました。インストラクターから「さっき言ったことを忘れたのか!」「そんな調子だと一生ボードに立てないぞ!」と何度も罵声を浴びながらも最後にサーフ・ボードに立てて、サーファーとしての認定書も発行してもらった時は感激しました。これが、東ティモールで実現できれば観光客を獲得する一助になること間違いないと、私の執務室の誰でも判るところに認定書を貼って部屋を訪れる人に力説しています。

 

珍喜劇(ハートのAが出てこない)

 職場の同僚が結婚することになり、彼のお祝いパーティが開催されたある日。私は彼と彼女の結婚を祝福するに相応しい何かをプレゼントしようと朝からおもいに耽っておりました。パーティが開催される時刻の約2時間くらい前にアイデアが頭をよぎり、自宅で1時間くらい予行練習した後、パーティ会場でそれを大勢の観客を目の当たりにしてぶっつけ本番で披露しました。キャンディーズの「ハートのAが出てこない」をアドリブの振り付けをつけて歌い上げると予想もしなかった私の豹変ぶりに誰もが目を大きく開けたまま釘付けでした。件の同僚は新婚旅行で訪れたインドで私の演じた「ハートのA」がずっと記憶に蘇っていたそうです。その日以来、「ハートのA」はカラオケ・パーティにはなくてはならない存在となっていました。「大使館員のかたいイメージが根底から崩れた」「あなたがそんなユニークな才能を持っている人だとは思いもしなかった」「親近感がもてるようになった」こんな評価を頂くことになりました。総じて「在留邦人の皆様から身近に感じてもらえる大使館」へのイメージ・チェンジに貢献できたのかと思えば私も幸せです。

 

 さて、今日は私の離任送別会を大使館の皆さんが開催してくれました。なんと私の拙いコラムをこれからも続けるよう強い圧力を受けてしまいました。

 自分にとり3年8ヶ月の在勤はいつまでも心の中で生涯忘れることの出来ない財産として生き続けていくでしょう。いつか東ティモールに帰ってきてしまうことを夢見つつ・・・・・・。(続く、予定)

(大橋)

 

 

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