館員の見た東ティモール

 

東ティモールにおける政務的生活(その6)

 

【首都ディリは大都会?】

 

館員の会話(その1)
「東ティモール着任時、特にニコラウ・ロバト国際空港に飛行機が着陸した時の印象はどうだった?」
「ついに来てしまったという感じかな。」
「じゃあ、自分の乗った飛行機がディリを離陸する時は?」
「何かわくわくする感じかな。」
「その後、また帰任する時はどんな感じがした?」
「デンパサールのンガライ空港9番ゲートに入った途端に現実に戻った感じがした。」

 

館員の会話(その2)
「初めてディリを離れ、地方出張に行く時はどんな感じだった?」
「何か新鮮な気持ちで、わくわくする感じ。」
「地方には地方独特の雰囲気があるよね。」
「そう。訪れる人をやさしく迎え入れる雰囲気を感じる。だから、心が落ち着くというか。心が洗われるというか。」
「そしてまたディリに戻るとどんな感じがした?」
「ディリがすごく大都会に見えた!」

 

私もそうですが、首都ディリに比較的長期にわたり在住している、あるいは、在住したことのある邦人の方々の中には少なからず同じ経験をされている様です。東ティモールでの生活は閉塞感が伴うと言われています。館員の会話(その1)はその事を端的に示しているのかもしれません。あえて閉塞感の存在を否定はしませんが、当地での任期を終え帰国の途についたある館員は、飛行機がディリを離陸してしばらくしたら、無性に泣けてきたと述懐していました。その館員は閉塞感から解放されたあまりに嬉し涙をこぼしたのではなく、任期中に出会った様々な人々との出会いを思い出したのです。心の奥底で人を虜にする東ティモールの秘密を自覚していたのだと思います。やがて当地での任期を終えて帰国の途につく飛行機の中に置かれた私は、人一倍涙もろいために、きっとその館員と同じ感慨にひたって、これまでに出会った一人一人を思い出しては、機内で涙にまみれていることでしょう。

 

館員の会話(その2)で言及されているように、確かにディリが大都会に思えたことがあります。こうした印象は私が、過去に赴任地カナダのモントリオールからトロントに行った時に感じた物理的な「大都会」という印象とは若干異なります。地方における穏やかな風景の中にとけこんだ生活の息吹と首都ディリにある活力が対照的に思えたからかもしれません。しかし、ディリの街が訪れる人を迎え入れない街だといっている訳ではなく、地方独特の雰囲気とはまた違った雰囲気を首都ディリが持っているということなのだと思います。

 

私は、これまでに様々な地方を訪れる機会に恵まれ、その度毎の思い出は既に紹介いたしましたものを含め、私の心の財産となって蓄積されています。そうした思い出をこれからも積極的に造って行きたいと考えています。これから東ティモールを訪れる方は勿論のこと、既に東ティモールを訪れたことのある方も、人を虜にするという東ティモールの秘密をご自身で探してみませんか。(続く)

(大橋)

 

 

(ご参考)

 

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