私の見た東ティモール

 

 

マナトゥトの海に憩う

 

 コウシ号は白波を蹴立てて進んでいる。釣り竿の仕掛けも完了。餌もOK。エンジン音が心地よく海風とロンドを奏で、ボートはポイントに刻一刻と近づいている。徐々に高まる闘志が指先にまで満ちてきた。「釣るぞ!大物を!」
 ポイントに到着し、エンジンが止まった。そして、釣り糸を下げる瞬間。この一瞬の緊張が週日の忙しさと疲れを瞬時に癒してくれるのです。
 さて、コウシは「光士」で我が愚息の名。シリの下にして思うままに操る、ことは実の息子には出来ませんが、アウトリガーの我がボートでは可能です。毎週末土曜はほぼ定期的に釣りに出かけ、釣った魚は夕食のおかずに。趣味と実益を兼ねた、マナツトならではの豪勢な遊びです。プロジェクトの運転手ジョン君が船の舳先に陣取り、若い漁師、ロマルド君が操舵手。船はロマルド君が管理してます。
 緊張して持っていた釣り竿の先が、ピクンと海底の生き物に反応します。瞬時に竿を跳ね上げますが、5度に一度位しか魚は掛かりません。ググッと竿に抵抗が来て魚の重みを感じれば、徐々にリールを巻き上げていきます。海底まで40メートル、コラルリーフであるのは間違いありません。時々珊瑚を釣り上げたりしますから。リールを巻きながら魚の大きさと顔を想像しますが、この瞬間が至福の時。
 魚種は鯛からコバンザメまで多種にわたりますが、ハタが一番多いかな。鯛はサシミに、カワハギは甘辛く煮付け、ハタは唐揚げしてあんかけ。コバンザメはぶつ切りし、塩茹でにして酢みそをつけて賞味。ついついウィスキーの量が増えます。
 潜ればそこは珊瑚の天国。貝もあるし伊勢エビにも遭遇しました。その時道具を持ってなく、ヒゲを掴まえましたが、エビも然る者、簡単に人間様の胃袋に直行はしません。ヒゲを切られて逃がしてしまいました。しかし、何と言っても熱帯魚が群れる美しい海は別世界、東ティモールの宝。心まで癒されます。海を目玉の観光産業を興せば、石油に変わる大きな収入源となるんだがなあ。治安とインフラが先立つ問題かな。
 この海岸で3ヶ月に一度はスタッフ家族とピクニックを楽しみます。もちろん釣った魚や焼き鳥のバーベキュー。海を見つつ美味い魚を頬張り、浜辺で憩うのはここマナトゥトに住む者の特権でしょう。
 良かった、ここに赴任して!

 

                                                                                          

二木(JICA専門家)



写真1

コウシ号の勇姿

写真2

刺身用の鯛、言うことなし

写真3

コバンザメ(サパート)、茹でて酢みそが美味


 

 

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