館員の見た東ティモール

 

「オエクシ県での勘太郎語学センター開校式に出席して」

 

 私は、10月21日(木)~23日(土)、オエクシ県に出張し、22日(金)午前に行われた勘太郎語学センター開校式に出席してきましたのでご報告します。

 

 オエクシ県を訪れたのは今回が初めてでしたので、先ず、オエクシ県について簡単に紹介させていただきます。
 オエクシ県は、東ティモールから国境を越えてインドネシア領内に入り、西へ約80キロ行ったところにある、インドネシアに周りを囲まれた東ティモールの飛び地です。面積は2700平方キロと神奈川県(2400平方キロ)より少し大きい県です。人口は県全体で5万人ほど、ほとんどの住民は山間部の村々に住んでいるようです。オエクシの町は海岸に面した小さな町です。町の側まで険しい山が迫っており、インドネシアとの国境を越えて山々が続いています。高い山に囲まれているため海からの潮風が吹き抜けないのか、ディリよりかなり蒸し暑く感じました。

 

(写真1:オエクシ港から見たオエクシの町。)

(写真2:オエクシの町には山が迫っています。)

 

 現在、首都ディリとの交通は週2便のフェリーだけ。オエクシ港は港というより船着き場に近く、ディリから到着したフェリーから海に浸かりながら荷下ろしをしていました。オエクシの人々の生活を改善するためには一日も早い修復が必要と感じました。

 

(写真3:朝、ディリからオエクシ港に着いたナクロマ号)

(写真4:海に浸かりながらの下船、荷物の荷下ろしです。)

 

 オエクシ県とインドネシアとの国境通過地点に全く緊張感はなく、人影はまばらでした。ただ、インドネシア側に入るには税関、入国管理局、警察、軍の4か所の検問所を通らなければならない上、一般の東ティモール人が陸路で国境を通過するには20ドルの査証料を払う必要があり、更に国境は午後3時には閉鎖されてしまうとのことでしたので、オエクシ県とインドネシア側との人・物の移動は大変制約されているようでした。物の値段もインドネシア側に行くと途端に半分近くに下がります。南のオエシロの国境地点に国境マーケットが作られていましたが、両国の合意待ちとのことでまだ使われていませんでした。オエクシ県の発展のためには周りを囲んでいるインドネシア側との往来を自由にすることが不可欠であると感じました。

 


(写真5:南部オエシロの東ティモール側国境ゲートを越えたところです。)

 


(写真6:両国国境ゲートの中間にある国境マーケットです。まだ使われていませんでした。)

 


(写真7:インドネシア側の国境ゲートです。「歓迎」と書いてあります。)

 

 オエクシに到着した翌日の22日(金)午前、勘太郎語学センターの開校式が行われました。この語学センターは、オエクシ県担当のジョルゼ・テメ国務長官が中心となって設立したもので、校舎は、2004年に平和維持活動に当たった自衛隊が使った神戸地震被災者用のプレハブハウス4棟を転用したものでした。このプレハブハウスは「神戸ハウス」と呼ばれています。語学センターの生徒は東ティモール政府機関の若手職員も含め約90名、先生はアメリカ人、オーストラリア人など6名のボランティアとのことでした。
 挨拶に立ったテメ長官は、外部から孤立しているオエクシを世界に開いていくためには外国語、特に英語を学ぶことが重要である、語学センターでは英語を教えるが、将来、ポルトガル語、インドネシア語、韓国語、日本語も教えるように語学センターを発展させたいと大変情熱を込めた挨拶をされました。また、その挨拶の中で、テメ長官は、勘太郎語学センターの名前の由来について、戦前(昭和18年)に日本で大ヒットした映画「伊那の勘太郎」の主人公、勘太郎と自分の父親の名前が同じ発音であるとの話を北原大使から伺い、語学センターの名前としたことを紹介すると共に、日本の自衛隊が残した「神戸ハウス」を使って語学センターを開設することができ日本に感謝する、今後、日本語も教えていきたい、是非、日本から語学センターに支援をお願いしたいと我が国に対する期待を表明されました。早速、25日(月)から授業が開始されるとのことで、1人でも多くのオエクシの若者が外国語を学び世界との架け橋になり、オエクシが発展していくことを心から願わないわけにはいきませんでした。

 

(中嶋)

 

(写真8:神戸ハウス4棟を

使った勘太郎語学センターです。開校式の準備中。)

(写真9:ボランティアの英語教師6名を

紹介するテメ長官(右から3人目)。)

(写真10:語学センターの図書室のテープ・カットです。一番左の背中を見せている方がテメ長官、

右から2人目が私です。)

(写真11:図書室の中。英語の語学教材、百科事典、小説、子供向け絵本等が並んでいました。)

 


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