4月12日(月)、私は、東ティモール南西部のアイナロ県における国連警察から国家警察への権限委譲式に出席してきました。現在、東ティモールは警察権限を国連警察から回復し、自らの手による国の管理を目指して努力中であり、アイナロ県の権限委譲は全国13県の中で5番目に行われました。私は、東ティモールに着任して3週間でしたので、今回のアイナロ県出張はこの国を知る上で大変有意義なものでした。
午前9時50分、国連関係者約20人、私を含めた外交団約20人が国連ヘリ2機にそれぞれ分乗して、ディリ空港を飛び立ちました。ヘリは内陸部に向かい、山並みの上を飛行すること約40分でアイナロの町に着きました。空から見た東ティモールの山々は、緑が映えて、大変美しいものでした(写真1、2)。ただ、山並みはかなり険しく、人の往来、物流にとって大きな妨げになっていることが伺えました。
(写真1)
(写真2)
ヘリが降り立ったところは台地に開けた野原(写真3)で、待っていた国連の四輪駆動7~8台に分乗して、10分ほどでアイナロの町に到着。アイナロ県は全体で人口5万4千人、アイナロの町は人口数千人の小さな町でしたが、この県では一番の中心地とのことでした。
(写真3)
警察権限委譲式の会場入り口に着くと、頭に羽根飾りを付け、ナタを振りかざした年長の村人から歓迎の挨拶を受け、ビックリしました(写真4、5)。これは、我々外国人を歓迎するための特別の趣向でしたが、東ティモールにどの程度、昔からの文化、風俗が残っているのか大変興味深く感じました。
(写真4)
(写真5)
国連警察から東ティモール国家警察への権限委譲式は、町の広場で行われ、(1)整列した東ティモール国家警察部隊による国連と東ティモール政府の代表に対する敬礼(写真6)、(2)国連と東ティモール政府の代表による警察部隊閲兵、(3)権限委譲書への署名、(4)警察部隊の行進(写真7)と進み、これで式典が終わったかなと思っていると、更に(5)少年少女の楽団の行進、(6)マーシャルアーツ・グループによる演武披露が続いて、だんだん、町を挙げてのお祭りのようになっていきました。山間部の小さな町ですから、このような式典は何年に一度あるかないかの一大イベントだったのかもしれません。式典終了後の昼食会も、地元住民がたくさん参加して、大変にぎやかで和気あいあいとしたものでした。
(写真6)
(写真7)
昼食が終わって、会場の外に出て町の風景を見渡していると、道路脇に東ティモール国旗と「日の丸」が描かれた記念碑(写真8)を発見して、ビックリしました。近寄って読んでみると、2006年に日本が首都ディリとカサ(Cassa)という町との間の道路を無償援助で改修したことを記念したものでした。このようなところにまで日本は援助しているのだと感激しました。
(写真8)
午後1時過ぎ、そろそろディリに帰ろうという頃、黒い雨雲が空一面を覆い、雷鳴まで鳴り始め、そのうち、文字通り、バケツをひっくり返したような土砂降りになってしまいました。アイナロは標高の高い山間部なので、天候の変化が激しいようです。このため、ディリから迎えに来てくれるはずの国連ヘリは、山に衝突するかもしれないということで飛行不能になり、ずっと辛抱の雨宿りになってしまいました。
雨足がいくらか弱まり、迎えのヘリが来てくれると知らされた時はもう午後6時近く。国連関係者は迎えに来た国連ヘリで一足先に帰還しましたが、2機目の国連ヘリがまた飛べなくなったとのことで、我々外交団を迎えに来てくれたのは、緊急出動の要請を受けたオーストラリア軍の軍用ヘリ3機でした。雨が降りしきる中、足下がぬかるみ状態になった野原をオーストラリア軍の兵士に誘導されて、軍用ヘリに乗り込みました(写真9)。幸い、飛び立つと間もなく雨雲から抜け出すことができ、山間を縫って飛行、午後6時半頃、ディリに無事帰還することができました。軍用ヘリコプターに乗ったのは今回が初めての経験で、オーストラリア軍の機動力には感心しました。但し、東ティモールの治安情勢も最近はかなり安定してきており、現在、東ティモール政府は“Goodbye conflict, Welcome Development”を目標に掲げるまでになりましたから、これからは、日本が同じアジアの友人として、東ティモールの経済発展にこれまで以上に力を発揮していけると思います。
(写真9)
今回のアイナロ県出張はわずか1日の日帰り旅行でしたが、東ティモールの多様で美しく、かつ厳しい自然、地方の人々の生活ぶりや風俗に触れることができました。また、国連からの警察権限の委譲を受けて、自らの手で国を管理し、経済発展を目指そうとする東ティモールの人々の息吹も感じることができました。更に、私自身、地方の後れたインフラ状況などを直に見ることができ、これから、この国の発展のために尽くしていかなければならないと思いを新たにさせられた大変有意義な出張でした。
(中嶋)
(c) Embassy of Japan in Timor-Leste Avenida de Portugal, Pantai Kelapa, Dili, Timor-Leste (P.O. Box 175) Tel: +670-3323131 Fax: +670-3323130