館員の見た東ティモール

 

車を運転して

 

 私は東ティモールの日本大使館勤務になってもうすぐ3年半になります。
ここディリに来たころは、2006年の騒擾事件が起きて間もないころでしたので、この事件に巻き込まれまいとする多くの市民が田舎(地方)へ避難していました。避難することができない人や、家を壊されたり、焼かれたりして生活する場所を失った家族は、教会の敷地や公園あるいは空き地などにテントを張って生活している光景があちらこちらで目につきした。
 街を歩けば、扉やシャッターを閉ざした店が多く、営業していても事件の再勃発に備えて、閉店時間の間近な店のように人の出入りがやっとできる程度の隙間しかシャッターを開けていない店やレストランも多く見られました。

 

 東ティモールでは、車は、通勤、買い物、食事、それに街の状況などを知る手段として、生活に欠かすことのできない必需品です。手っ取り早く車を手に入れる方法は、手続きが簡単な中古車販売店で車を買うことです。販売店で扱っている車は、既にナンバープレートが付いていて、その日から乗ることができます。私は、東ティモールに来てすぐに、私の前任者に誘われて、大使館の先輩たちがお世話になっている中古車販売店を訪れました。その店に行って、まずはびっくり。選びようの無いほどの、展示している車の台数。
 お店の人が私に「今ある車も、売れて明日には無くなってしまうかもしない。今度いつ車が入ってくるかわからないよ。」というのです。このように言われてしまうと、そのまま考えることもなくその店で中古車を買うことに・・・。

 

 着任してすぐに車を手に入れることができたのはラッキーだったかもしれません。
 しかし、東ティモールの交通ルールを知らない。道路事情もわからない。それに、もしも事故に巻き込まれた場合や道を尋ねたいときに、現地語(テトゥン語)が話せない私。言いたいことが相手に理解してもらえないのではと頭をよぎる。
 そこで、運転手を雇おうと探してはみるものの、めぼしい人はそう簡単には見つかりません。結局、自分で車を運転することに。そのうち、だんだんと道を覚え、車の運転にも馴れてしまうと、運転手を見つけようする気持ちはなくなります。

 

 車を走らせていると、車同士の衝突事故や車とバイクの接触事故などの事故現場に出くわすことがあります。このような場面を目のあたりにしていると、スピードを控えて「慎重に運転」しなければと思うようになります。私自身、「慎重な運転」をしているつもりですが、しかし、果たしてそれは、「安全な運転」をしているのだろうかと自問することもあります。事故を起こさないように気をつけて運転をしているだけではないかと。うっかりスピードを出し過ぎたり、車間距離を取らなかったり、無理な追い越しをしたり、急ブレーキをかけたり、急ハンドルをきったり、交差点での一時停止を怠ったりなど、「安全運転」とは言えない運転をしているのではないか。相手が全面的に悪いと思われる運転をしている車や歩行者がいたとしても、ただ、ぶつからないようにそれらを避けて運転しているだけではないか・・・。
 しかし、東ティモールでの車の運転歴は3年6ヶ月になりますが、事態を難しくしているのは、この国では、「安全運転」をすれば事故に遭わないとは言い切れないのです。
 例えば、こちらが優先道路を走っていても、横道から一時停止も徐行もせずに交差点に侵入してくる車やバイク、方向指示などの合図無しに突然停まったり、曲がったりする車など、急ブレーキや急ハンドルをしなければならないことがよくあります。また、車間距離を取って走っていると、前方から車やバイクが近づいていても、後から無理な追い越しをかけ、目の前に割り込んで来る車もあります。このような交通マナーの悪い運転手がいる限り、「安全運転」を心掛けていても事故に巻き込まれる可能性が少なくありません。

 

私個人の経験から、東ティモールで車を運転する場合は、まず何よりも、「安全な運転」を心掛けること。そして同時に相手にぶつからない運転を心掛けること。この両方を厳守することが最も交通事故に遭わない運転方法ではないかと思います。

 

(諸橋)

 

 

 

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