アナさんと識字教室
「私は、自分の足が不自由だったから恥ずかしくて学校へ行けなかった・・今勉強できることが嬉しい!」とアナさんが小さい声で自分の気持ちを伝えてくれました。アナさんが通う識字教室は、メハラ村の小学校の空き教室を利用して月曜日から木曜日の午後3時から6時まで開かれています。私たちが住み始めた2004年には、年配のご婦人が2,3人でしたが、今年はお母さんが7~8人参加しています。教科書も大きく立派になりました。一つのテーマがテトゥン語とポルトガル語の両方で書かれて構成されています。カラー写真も沢山あり字も大きくて見やすいです。私は毎日通えないのですが、一緒に勉強したいので特別にお願いして仲間に入れてもらっています。
先生はリタさんです。小柄ですがパワーのある先生です。先生は一方的に教えるだけでなくよく質問を投げかけて一人ひとりの意見を発表させます。アナさんはみんなの中に入るとなかなか自分の意見を言えません。そんな時、リタ先生はファタロク語に切り替えて冗談交じりにやさしく説明をしてあげます。午前中は畑仕事をしてから出席するお母さん方にとっては、疲れも出てきやすい午後の時間です。先生は皆が集中できなくなるとグループ学習に切り替えて、もっと個人の意見を言えるように導きます。グループになるとテトゥン語よりファタロク語が多くなるので、少し活気が出てきます。アナさんも少し発言できる場になり笑顔も多くなります。窓の外からは子供たちが、覗いています。時には答えも教えてくれます。テトゥン語が終わると算数です。足し算、引き算を学んでいますが、どうも位どりが難しいようで、リタ先生も時々間違えます。位どりを学ぶために小学校の先生が工夫して作った教材(写真参考)が教室の隅に置かれていました。それも使って学びますがやはりむずかしいようです。そうなるとひょうきん者のお母さんの冗談が出てしばらくファタロク語の和やかな休憩になります。10月には、教育省の方が来て試験がありました。ほとんどの生徒が試験を受けました。合格すると、小学校○年修了の証書が頂けます。私は10月に日本に帰っていたため試験は受けられませんでした。メハラに帰ってきた私を見てアナさんが「試験を受けたよ。まだ結果は分らないけど・・」と嬉しそうに報告をしてくれました。留守中にもう一つ悲しい出来事がありました。リタ先生の一人息子さん(大学生)が交通事故で亡くなられたのです。ご主人は独立後インドネシアに帰ってしまったので、全く一人ぼっちになってしまったのです。アナさんはじめクラスメートのお母さん達と会う度にリタ先生のことが話題になり「私たちの先生のために祈ろう!」が合言葉でした。
リタ先生はまだ家からあまり出てきませんが、クラスメートと共に「新学期もリタ先生に教えてもらいたいです。」と伝えに行きました。リタ先生のクラスから今まで20名が卒業しています。アナさんをはじめお母さんの真剣なまなざしの中で学べることは私にとってもとても大きい事です。
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アナさん(左)とクラスメート
授業風景・・・
窓の外から教室を覗く子供たち 位どりの教材
石川(聖母訪問会)
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