館員の見た東ティモール

 

 

「東ティモール漫遊記」

 

 私達家族四人が、在東ティモール大使館へ着任するため日本を離れたのは、今年の四月中旬でした。慣れ親しんだ地元の横須賀から出発当日の成田空港まで、日本では、たくさんの桜がその花を見事な桜吹雪にして散らしながら、「しっかり頑張っておいで!」と、大きな不安を抱えた私の小さな背中を力強く押してくれたことが、だいぶ昔のことのように思えます。

 

 それから、早いもので、もう六ヶ月の月日が、東ティモールの地で経とうとしています。
 丈夫に産んで育ててくれた、両親、祖父母。いつも栄養のあるおいしい食事を作ってくれる妻のおかげで、幸いなことに現在まで、私を含む家族全員が大きな病気や怪我をせずに過ごすことができました。さらには、慣れない海外での暮らしを、それなりにではありますが、楽しめるようにまでなりました。

 

 本コラムのタイトルを「東ティモール漫遊記」としたのは、そんな私達が赴任してからの現地での状況を日本にいる家族や友人達に報告しているのですが、これが実は、なかなか好評(?)で、彼らからの強い勧めを素直に受け止め、当館ホームページの読者の皆様にも披露させていただこうと決心しました。タイトルは、そのまま当コラムにも引用することにしました。

 

 私が「漫遊」する目的。それは、縁あって当地に赴任することが出来たからには、東ティモールを伝え聞くのではなく、自らの足でくまなく当国内を巡り、いろいろなものを自分自身の眼で見て、手で触れて、出来るだけ現地の人達とも交流し、お互いのこころを少しでも通わせたいと考えているからです。
(自己紹介はこのくらいにして、早速コラムに入りましょう。)

 先ず、私が東ティモールの首都であるディリに着いて、一目惚れしたのは、「日本大使館前の海岸に沈んでゆく夕日」です。たしかに、日の出の太陽や、日中ギラギラ輝く太陽も、それはそれで暑くてすばらしいのですが、とにかく、私はダントツでここの夕日が大好きなのです。沈む夕日が好きなんてコメントを書くと、ネクラな奴かと思われそうですが、私はとても前向きで健康的な37歳の成人男性です。私は東ティモールに赴任したことで、日本がとても平和で、安全で、豊かで、すばらしい国だと、あらためて再認識させられました。しかし、すぐに私は、日本で高いビルに囲まれて暮らしているとき、沈む夕日でこんなに感動したことがあったかなぁ?と自問するに至りました。

 

 答えは「否」です。

 

 私の中では、日本の夕日は、日々の仕事に追われていることも手伝ってか、いつも気がつくと「夜」になっていて、しっかり夕日を鑑賞した記憶はあまりありません。太陽自身も「日本は、夜も明るいし、僕はとっとと沈みまーす。またあした~」と、ドライな感覚でパッと沈んでしまっているような・・・・
 その点、東ティモールでは、ゆっくりと沈む夕日が照らす最後の一閃が消えるまで、少年達は海岸でサッカーをしています。その様子を見ていると、最後の最後の一瞬までその日温かく自分たちを照らしてくれた太陽に感謝しながら月を迎え入れる。そんなティモール人達のあたたかい気持ちが私の心の中に入り込んでくるような感覚が芽生えるのです。

 

【私が大好きな大使館前の海岸に沈む夕日】

 

 さて、私が東ティモールを漫遊する上で、必要不可欠である強い味方を紹介しましょう。それは赴任前、当地の情報が少ない中、「くよくよ悩んでいても仕方が無い、先ずは行ってから考えよう!」と、私を励ましながら同行し、当地へやってきた妻と、助さん格さんとまでは言いませんが、とても頼りになる二人の息子達です。

 

 【妻と助さん】 【格さん】

※ 上記2枚の写真はいずれもディリ市内のレストラン及びスーパーマーケット内で撮影。

 

 ここからやっと本題に入ります。今回は家族で休日に出かけた、首都ディリから西へ車を走らせて、約3時間のリキサ県西部にあるマウバラ・マーケットまでの道中話しをさせていただきます。
 先ずは、道路!夜間は街灯も未設置の状態である上、カーブも多く、非常に怖いと思いますが、乾期の日中であれば、想像していた以上に道路の状態も良好ですし、ところどころで口を開いて待っている大小さまざまな穴にさえ注意すれば、特に問題なくドライブが楽しめると思います。(注:あくまで個人的な意見です)

 

【南国的で比較的キレイに舗装された道路が続きます】

 

 それから、ディリから西へ車を走らせると、右手に海、左手に山という景色が続きます。左に大きく曲がるカーブの先端でハンドルを左に切ると、ところどころで、とてもキレイな海岸がその両手を大きく広げて待ちかまえていて、左斜め45度くらいからでしょうか?「ドドーン!」と、私たちと向き合います。当然のように子供達は声を上げて「(車を)止めて!止めて!」と大はしゃぎです。その都度、車を止めて海岸に下りられるところを探し、海岸を散策したため、なかなか車が前に進みませんでした。

 

 砂浜では、地元横須賀の海岸では見たこともないような「白くてキレイな石」がたくさんあって、まるで女の子がするように、私を含む男子三名が、一生懸命「キレイな石集め」に興じてしまったことは、ここだけの話にしておきましょう。

 

【東ティモールのとてもキレイな海と砂浜】
 

 

 そうこうしているうちに、ディリを出発してから約3時間30分、やっと目的地のマウバラ・マーケットに到着です!ここでは、写真のように数軒のお店が軒を並べていて、それぞれのお店で地元の方々が丹精込めて作り上げた各種工芸品を購入することができます。

【マウバラ・マーケット全景】

 

【店内の様子】
店内には、東ティモールの伝統織物である「タイス」や手編みのカゴなどがたくさん並べられており、

品選びにもそれなりに時間がかかるようです。

 

 さらに、このマーケットの向かい側には、ポルトガル時代の要塞が今も残されており、錆びついた大砲二門が、その砲身を今は平和となった海に向けて静かに佇んでいました。

 

 

~おしまい~

 

 本コラムを御覧になった皆様、いかがだったでしょうか?少しかけ足での紹介となりましたが、ここまでが、今回ディリからマウバラ・マーケットまでを半日かけて家族で漫遊?したお話しとなります。

 

おまけコラム
 幸いなことに、今回の漫遊では何人かのティモール人達と触れあうことも出来ました。ディリ市内では、なにか行動を起こそうとしても、言葉の問題や、日本人特有なのでしょうか?萎縮してしまったりして・・・・お互いに気持ちを通わせることが難しいと感じるときも正直、多いのです。が、地方では、ゆるやかに流れる時間の中でお互いに一人の人間として認識しあいながら、互いの距離をゆっくりとではありますが縮められているような気がしました。
 そして、私は、この柔らかな東ティモール地方独特の雰囲気も好きになりました。

 

【マウバラ・マーケットで出会った家族達】

 

【リキサ県の橋の上で出会った学生達】

 

 最後になりますが、東ティモールという国は、現在進行形で国造りの真っ最中です。私は家族を連れて赴任しているため、深刻な病状には対応出来ない現地医療機関や現地での教育上の問題、治安上の問題等々を考えると、正直、不安になることもあります。しかし、その不安と同等、もしくはそれ以上にこの国には、すばらしいものが存在することも事実だと思います。
 本当は皆様に、もっともっとお伝えしたいのですが、私の力不足でこのすばらしさを十分お伝え出来ないのが、くやしくてたまりません。次の機会までに私は、写真の腕前と文章力を向上させて、生きた東ティモールの状況を漫遊記第2弾でお伝えできるようにしたいと思います。

 

【今回の漫遊の帰り道、リキサでみた夕日】

 

それでは、皆様「漫遊記第2弾」でお会いしましょう!

~ほんとうにおしまい~

(早川)

 

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