私の見た東ティモール

ティモールの幻の魚

 

 昨年12月に、日本で幻のクニマスをさかなクンが再発見し大きな話題となりましたが、東ティモールにも幻の魚がいます。

 東ティモールに赴任が決まった際、職場の怖い先輩からティモールメダカを探せという無理難題?を与えられました。この宿題を解決しないまま、日本に帰国することになりました。東ティモールに在住する人も、ほとんど知らないと思いますのでここに書きます。

 日本のメダカOryzias lapites は、日本人なら誰でも知っている淡水魚です。また、外国の魚類学者の間ではMedakaで通用しています。しかし、開発や外来種のカダヤシ等の魚との生存競争に負けているため、大きく減少しています。メダカは水田や近辺の小川によく生息するため、メダカの英語名は、Ricefishといいます。また、学名Oryzias lapites.のOryziasはラテン語の稲に由来しています。

 メダカはアドリアニクチス科メダカ属の魚です。メダカ属は24種類が確認されており、アジア(中国、インドを含む、フィリピンは一部地域)地域に生息しています。ティモールが東限となっています。そのため、ティモールの東のパプア・ニューギニアや南のオーストラリアには生息していません。ティモールには、セレベスメダカOryzias celebensis とティモールメダカOryzias timorensisの2種類が生息しています。

  ティモールメダカ Oryzias timorensisは、ティモールにしか生息していない淡水魚で日本のメダカとは異なります。1922年に発見されてから、詳細情報は、不明となっています。2004年、東ティモールの淡水魚に関する論文が発表され、ティモールメダカを目録していますが、論文を入手して読んでいませんので詳細は分かりません。いずれにしても日本人で確認した人はいません。標本は、オランダのアムステルダムの動物博物館にあります。川で泳いでいる写真等もなく色あせた標本の写真しかありません。通常の魚類図鑑(ティモールに特化した動植物図鑑はない)にも出ていません。

 生息地について、1922年の記載に、ティモール中部(Mota Talau)との記載があるだけです。地図で調べたところ東ティモールのマリアナ近くのインドネシア国境沿にTalau川(南緯9度4分付近、東経125度付近)があります。Motaはテトン語で川の意味なので確度が高いと思います。インドネシア国境沿いのマリアナの水田一帯に生息する可能性があります。

 全長は、35mm程度です。背鰭の軟条(鰭にあるスジのようなもの)数は9本から10本、尻鰭の軟条数は17本から19本です。色については、1922年の記載しかありませんが、褐色で、腹部は暗色。側面に黒い線があり尾鰭の箇所で、ややはっきりとした黒い斑紋となっています。

 東ティモールの動植物の調査は、19世紀から20世紀初頭に実施されました。その後は、ほとんど調査が進んでいません。そのため、未知の動植物があるかもしれません。

 

ティモールメダカが生息しそうな水田

榎本(JICA東ティモール事務所長)

 

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