東ティモールへのスタディツアーを引率して
2010年5月にJICA専門家としての東ティモールでの業務が終了してから今回が2回目の東ティモールへの訪問となる。2011年の春休み、そしてこの夏休みと親戚の家を訪ねるような気軽さで東ティモールを訪れている。
今回の訪問は学生を連れての訪問となった。私の勤務する大学では、毎年夏休みを利用して2週間程度アジアの途上国へスタディツアーを行っている。昨年はラオスを訪問させていただき、今年は私の第2(第3?第4?)の故郷である東ティモールの訪問となった。
スタディツアーの日程は、全体で15日間、そのうち東ティモールに11日間滞在するという実質的に東ティモールへのスタディツアーである。1年生と2年生が中心の18名(男子9名、女子9名)が参加した。学生のほとんどが途上国初体験であり、なかには海外旅行も初めてという者もいた。私は東ティモールに2年間住んでいたので、東ティモールという国や東ティモール人の気質、またどこでどういうものが売られているか、治安状況はどうかなどについて、ある程度分かっている。しかし、東ティモールという国に初めて行こうとする学生たちは、東ティモールに入るまでは、不安と期待が入り混じっていたのではないかと推測する。
東ティモールの知名度は日本ではまだまだ低い。東ティモールのニュースもほとんどでない。そのため、東ティモールが独立する際にTVで流れた騒乱のイメージを持ち続けている人がいまだに多い。私の感覚では、治安は他の途上国と比べても安定していると感じているが、「東ティモールはまだ危ないんじゃないか?」という声が多く聞かれ、その声に答えるところからこのスタディツアーは始まった。その際に、在東ティモール日本国大使館のホームページに載っていた「最年少在留邦人」のまなと君とけんた君の写真を見せて治安状況を説明し、納得してもらった。(大使館の皆さん、ホームページを利用させていただきました。ありがとうございました。まなと君とけんた君のご両親にも感謝。)学生たちの印象も「思った以上に治安が良くて安心した」というものであった。
さて、今回のスタディツアーであるが、多くの皆さんのご協力を得て実現した。まずご協力いただいた皆様にお礼を申し上げたい。日本大使館、JICA、青年海外協力隊、AFMET、PARCIC、べモス給水プロジェクトを見学させていただいた。学生たちも短い期間に多くのODAやNGOのプロジェクトを見学することができて日本の国際協力を実感できたものと思う。私自身、ベモス-ディリ給水施設緊急改修プロジェクトを訪問するのは初めてであった。乾期にはカラカラ、雨期には茶色い濁流の流れるコモロ川の上流にこれほどきれいな清流があること自体が驚きであり、一方で普段目にすることのない人里離れた(?)場所に、ディリ市民に安全な水を供給する施設があり、日本のODAで改修が行われていたことも新しい発見であった。日本の支援はまさに「縁の下の力持ち」である。普段はそれほど目立たないかもしれないが、なくなれば非常に困る。「安全な水」などはその典型であろう。東ティモールの発展を土台の部分で支えているという印象をさらに強くした。
今回の訪問を通して、東ティモールは正常に進化(発展)していると感じた。私が東ティモールに赴任した2008年は、まだ国内避難民のキャンプが至る所にあり、独立時の騒乱で焼かれた廃墟も多数あった。国連警察も至る所で活動していた。しかし、今回の訪問では、新しい建物が多く建設されており、廃墟も少なくなっていた。治安もより安定し国連警察も少なくなっていた。東ティモールは間違いなく発展への一歩を踏み出している。
私は密かに期待している。今回引率した学生が父親や母親になって、その子供たちが今の学生ぐらいの年齢になっているころには、東ティモールも今のタイやマレーシア、もしかすれば日本のように発展しているのではないかと。それまでずっと東ティモールをみていきたいと。われわれのスタディツアーはこれからも続く。定期的に東ティモールを訪れ、この新しい国の成長を見守っていきたい。
最後に今回お世話になった皆様にもう一度お礼を申し上げたい。学生によき機会を与えてくださり、ありがとうございました。
そして次回の訪問についてもお願い申し上げたい。次回もよろしくお願いします。
ベモス給水堰(写真提供:大日本土木・高野様)
石﨑(名古屋学院大学外国語学部国際文化協力学科講師)
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