広報文化

 

 

東ティモールの温泉開発チームからの提言「歴史遺産・自然環境の保全、住民との協調」

 

 

 

 8月19日午前、21世紀東アジア青少年交流計画(JENESYS)プログラムで当国を訪れている温泉研究家の郡司さん、温泉ソムリエ・カメラマンの杉本さん、温泉愛好家の横平さんは、東ティモールにある5つの温泉の視察を終え、グテレス副首相への表敬訪問を行いました。また、同日午後には観光商工省(MTCI)で東ティモール政府と民間の観光関係者ら約15名の前で、温泉開発の可能性ついてプレゼンテーションを行いました。

 

 郡司さんらは、グテレス副首相表敬とMTCIでのプレゼンテーションで泉質の調査結果や観光資源としての魅力、観光開発に関する提言を皆さんに伝えました。(温泉開発チームからの提言は本ページの最後にまとめてあります。)

 

 特に郡司さんらが強調していたことは、温泉開発を進めて行く上で、東ティモールの歴史遺産を生かしていくこと、自然や人々の暮らしを守りながら観光地化させていくことの大切さを訴えていました。

 

 「今のままが最高!」

 

 そう語った郡司さんらの言葉は、観光客向けのホテルや特産物販売所、観光案内板等の観光インフラが必要である一方で、温泉開発によって最高の源泉を有する東ティモールの温泉や美しい景観、さらには地域の皆さんの日常生活や歴史遺産が破壊されてしまう危険性に対する警鐘を含んだものでした。

 

 グテレス副首相は、「東ティモールにある温泉を通じて、ぜひ東ティモールの魅力と新しいイメージを日本の人々に伝えてほしい」と語りました。

 

 

 MTCIでのプレゼンテーションでは、観光関係者から温泉の効能や今後の開発の可能性、課題等に関する様々な質問が多数寄せられ、活発なディスカッションが行われました。 さらに、プレゼンテーション終了後も参加者からの質問が相次ぎました。

 

 温泉開発チームのメンバーは約1週間のプログラム中に、東ティモールの温泉だけでなく、雄大で手つかずの自然、道中で出会った人々、そして何よりも子供たちの笑顔に感動したとのことです。

 

 (参考)夢ふくらむ 東ティモールの温泉開発チームが来訪されました

 

撮影した写真を交えながらプレゼンテーションをする温泉開発チーム
プレゼンテーションに聞き入る観光関係者
プレゼンテーション終了後も質問が相次ぎました。

 

 

 

―東ティモール温泉開発チームによる提言―

 

 

 「ティモールの魅力」

今回の温泉視察では、ディり、アタウロ島、バウカウ、マリアナを訪問しました。この視察を通じて、私たちは東ティモールのすばらしい自然や人々に元気づけられて感動し、また東ティモールの至る所にある潜在的な観光資源を多く見つけることができました。 私たちはまず、東ティモールの地方で見られる手付かずの自然とダイナミックな景観、美しく澄んだ海と緑豊かな山に感動しました。また、途中訪れた村々に住む人々の笑顔、素朴さ、温かさ、生き生きとしている子供たちの姿を見て、少なからずコミュニケーションをとるうちに、東ティモールが大好きになりました。そして、東ティモールにはすばらしい温泉があります。温泉は、全く加工されていない自然のままの状態であり、東ティモールの豊かな自然資源となっています。私たち日本人は、温泉が大好きで温泉を目当てに東ティモールを訪問することもあるでしょう。温泉は、日本や韓国、台湾といった北東アジアの国々だけでなく、諸外国でも人気のある施設ですので、観光資源として将来的な開発が期待されます。今回は5つの温泉を視察し、後ほど個別の温泉に関する視察報告と提言を行いたいと思いますが、まずは、温泉を利用した観光開発に関して全体的な提言をしたいと思います。

 

 「提言1~2:自然環境を守ること・地域と密着した観光開発」

温泉を利用した観光開発を行う際は、環境や自然を破壊することなく、東ティモールの自然を活かした観光開発を行うべきだと思いました。そのためには乱開発を避け、余計な建設はしない等の工夫が必要です。また、学校やコミュニティーで、地域住民に対する環境教育も必要であると思います。具体的には、道路や山にゴミ等を投げ捨てない等、自然を美しく保つことを、国民全員が行うことで東ティモールの自然環境はきれいに保たれると思います。

次に、地域と密着した観光開発を提言したいと思います。今回訪れたいくつかの温泉には、村の近くにあり実際に村人が利用していました。観光客が押し寄せると、地域住民の暮らしにも影響を与えます。観光開発によって住民の生活環境が悪化しないような配慮が必要です。また、観光振興によって地元住民の経済活動が活性化することも大切です。

 

 「提言3~4:アクセスと広報」

温泉は比較的離れた場所に点在しているため、アクセスをより容易にするための道路整備が重要になってきます。また、町の名前や代表的な都市までの距離等を示す道路標識等も必要であると思います。

言葉の通じない旅行者にとって、道路標識や看板は非常に役立つと思います。 最後に、東ティモールの観光情報をより整備し、広報していただければ外国人にとっても安心して訪れることのできる国になると思います。例えば、東ティモールの地図はありますが、観光名所を記した観光地図を作成したり、旅行のモデル・コースを作成することによって、東ティモールに関する知識が少ない外国人旅行者に、わかりやすい観光情報を提供することは効果的であると思います。

 

 ピリラ温泉「ビジネスとリゾートの複合施設」

ピリラ温泉は首都ディリから車で約40分と非常に近く、ロケーションを活かした温泉を有する宿泊施設の建設が考えられる。空港から近いため飛行機で到着後、そのままピリラに宿泊することが可能である。ビジネスマン等のために、シャトルバス等を運行させてディリへのアクセスを容易にしたり、宿泊施設内に会議施設を設けてホテル内でコンベンションを行おこなったりできるよう、ビジネス目的の施設を強化した温泉リゾートが考えられる。また、ディリに宿泊する観光客に対しては、日帰り旅行が可能な温泉リゾートとしても機能できるような施設があるとよい。

 

 ワイカナ温泉「バウカウとセットで観光開発」

ベニラレから山道を約40分下ったところに位置するワイカナ温泉は、周辺に宿泊施設をつくる場所がない。そのため、バウカウを起点として整備するとよいと思われる。バウカウからワイカナまでの移動中には、バウカウの町なみ、教会や棚田、防空壕や伝統的な家屋を有する村々等の美しい景色があり、これらの観光素材を活かして東ティモールの歴史や文化を楽しむことができるよう、旅にストーリー性をもたせることができる。道路の舗装状況が悪いため、整備を行うとよりアクセスが容易になり、訪問客も増加すると思われる。

 

 ビケリ温泉「エコを主体としたリゾートとして開発」

ディリからフェリーで約1時間半離れたアタウロ島は、美しい海を活かしてビーチ・リゾートの開発等が考えられるが、エコを前面に押し出した開発が好ましいと思われる。今後、より詳しい調査をする必要があるが、ビケリ温泉の地熱を活かし、水より沸点の低いアルコールを利用した「アルコール地熱発電」を将来的に導入する可能性もあると思われる。現在、アタウロ島のフェリー発着場所には桟橋等がなく、島を観光地化するためにはインフラも整えなければならない。ピリラ、ビケリ温泉ともコンクリート製で2~3メートルくらいの浴槽をつくるとよい。

 

 ボロ・ララン温泉「トレッキングと温泉」

ボロ・ララン温泉はマリアナから約1時間離れたメリゴ村にあるレスルリ山にあり、山の中腹にある村から片道約1時間のトレッキングを要する。山道はそれほど急ではなく、トレッキング初心者でも山の景色や農村の風景を満喫しながら十分に楽しむことができる。ボロ・ララン温泉は、トレッキングの目的地としても理想的である。現在、ボロ・ララン温泉は未整備のままで源泉がそのまま川になって流れているが、自然のままをできるだけ活かしながら、簡単な浴槽を作るとよいと思われる。トレッキング・コースを設けたり、案内板を設けたりすると観光客にとってよりフレンドリーである。

 

 マロボ温泉「遺跡の保全と観光開発」

マロボ温泉の湧出量は毎分約2000リットルであると思われ、日本であれば、温泉宿が立ち並ぶ温泉郷ができる規模である。また、温泉の底に沈殿する泥は、日本では10の温泉でしか見られなくなった貴重な泥で、皮膚病や美白に効果がある。マロボ温泉は、山の景観とポルトガル時代の遺跡を活かした開発が好ましく、これらはきちんと保全すべきである。そのため、宿泊施設が温泉から少し離れたマリアナ等にあるとよいと思われる。マリアナからマロボへの道路上には、休憩所や地元の特産品等を販売する売店等が必要で、トイレも併設されているとよい。マロボ温泉はすばらしい温泉であり、今後の観光地化が最も期待される温泉である。

 

 

(c) Embassy of Japan in Timor-Leste  Avenida de Portugal, Pantai Kelapa, Dili, Timor-Leste (P.O. Box 175) Tel: +670-3323131 Fax: +670-3323130