東ティモールにUNMIT軍事連絡要員として派遣されて2か月。非常に安定した治安状況の元で勤務を続けパトロールもルーチン化してきた矢先の事だった。いつもと同じように、ある村の警察署長にインタビューのため市場に向かった所、そこには異様な光景が。
市場の中心にある交番を囲むように数百人の群集が集まっている。そして、交番の前には小銃を持った警官が数人。後に判明した話では、数日前にギャング・グループ数百人が関与した抗争が起き、隣接する村にまで抗争が波及し始めたため、署長がグループ幹部及び村長を交番に呼び、話合いの最中だったとの事である。交番周辺は対立するグループが睨み合い一触即発の雰囲気であり、引き上げようかとの思いがよぎった。
その時、交番から姿を現した署長が村長達と共に、群集に向けて抗争の終結を宣言し、帰宅するよう命じた。その後、まさに潮が引くように群衆は解散した。この警察署長は銃による威嚇ではなく、多くの関係者と根気よく会話することで事態を解決した。実はこの警察署長は多くの村長から全幅の信頼を寄せられている地元では有名な人であり、常に所轄を飛び回り多くの人々と良好な関係を築いてきたからこそ、暴動の悪化を回避する事ができたのである。
我々軍事連絡要員は武器を携行していない。しかしながら、地元の人々との良好な関係は何にも勝る自己防衛手段にも成り得る事に改めて気付いた。治安状況が安定している今だからこそ、パトロールをただのルーチンワークにするのではなく、地元の人々との良好な関係を確立・維持するための機会と捕らえて、引き続き当地で勤務して行きたい。
小銃を背負って警戒にあたっていた警察官の様子 左から警察副所長、ポルトガルのMLO、警察署長
バウカウUNMIT軍事連絡要員
皆木1尉
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