PKOの現場から

 

 

「「タコ」でよかった」

 

 

 みなさん、東ティモールではどんな言語が使われているかご存知ですか?

 公用語は2つありますが、ほとんどの人はポルトガル語よりも「テトゥン語」を話しています。

 私たち軍事連絡要員は、現地の人々に対してインタビューをするのですが、その際は英語-テトゥン語の通訳が助けてくれます。

 「おはようございます。私はクリタと言います。」

 これくらいは、テトゥン語で自己紹介できるようになりました。でも、この段階で大体の人は不思議な顔をするか、くすっと笑います。

 

バウカウ県内の村でインタビュー(右:村長、左:通訳)

 

 その秘密は、私の名前にあります。

 「クリタ」とは、テトゥン語で「蛸(タコ)」のことなんです。

 

「クリタ、クリタ!」(タコ、タコ!)と盛り上がる子供たち

 

 子供たちは、胸の名札を見て誰かが「クリタ」、「クリタ」…とつぶやき、だんだん、口々に広がり、うふふ、あははははは…という感じでしまいには大笑いします。「タコ、タコだって!」、「タコが来た!」というところでしょうか。私がタコの真似をすると(東ティモールではどんな表現なのかはわかりませんが)、すごく喜んでくれます。そして笑いが広がって、仲良くなり、時間が許すときは一緒に遊んだりします。

 

「クリタ?」(本当にタコ?)と何度も尋ねる可愛い姉妹

 

 この名前のおかげで、現地の人々によりインパクトを与えられていると思います。

 5月には、東ティモール国軍の将校・兵士に対して、日本の震災と自衛隊の活動等に関してプレゼンテーションを行う機会を頂きました。約40名の受講者のうち、半数は首都ディリから、そして他は私の勤務するバウカウから出席していました。

 

ディリ近郊の国軍訓練施設において講義中

 

 自己紹介ではもちろん、「タコ」の絵を描き、笑いをとることに成功しました!

 その後、私自身もリラックスして楽しくプレゼンテーションを進めることができました。

 また参加者は、日本の状況について非常に関心を示してくれ、大変な熱意を感じました。この貴重な経験については、皆さんにぜひ紹介したいと思います。次回に乞うご期待!

 

 さて、このPKOは個人派遣という形なので、基本的に仕事から生活まで、一人で片を付けて生き延びなければなりません。

 バウカウ市近辺には、日本人は一人です。

 不便もたまにはありますが、すでにほぼ慣れました。水のシャワーも2日で慣れました。最近では、水を出す時間を2分以内にして全身洗えるようになりました。

 

パトロール途中で現地購入の魚とおにぎりで昼食

 

 今気を付けているのは、日本から来ていることをなるべく多くの人たちに印象づけるということです。

 現地ではたった一人でも、日本には支えてくれる人々がいる。そして、日本の代表で来ているんだ、ということが、限られた派遣期間に一人でも多くの人に話しかけて交流したいという意欲につながります。

 さて、この名前のおかげで、最近うれしいことがありました。バウカウ近郊をパトロール中、通りかかった国軍兵士が「メージャークリタ!」(栗田3佐!)と呼びかけてくれました。バウカウでの再会にとても感激しました。

 彼が「タコ3佐」を覚えていてくれたのは、きっとこの名前のおかげでしょう。

 テトゥン語は話せなくても、「クリタ」という名前の強み(?)を生かしてこれからも頑張ります!

 

バウカウの夕焼け

 

 

バウカウUNMIT軍事連絡要員

栗田3佐

 

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