平成21年12月11日
東ティモールの南西部に位置するコバリマ県でコミュニティ開発を中心に活動を行っているNGOグルーポ・ハブラス・コバリマ(以下、GHC)が、日本政府の支援を受けて行ってきた灌漑施設の拡張工事がこのほど終了し、12月4日(金)、コバリマ県ズマライ準県ライメア村にて記念式典が催されました。本事業は、コバリマ県ズマライ準県の水田地帯において既存灌漑システムから全長1kmにわたり灌漑用水路を拡張するものでした。
式典には、ソアレス農業・水産省灌漑局長、アマラル・コバリマ県灌漑局長、メンドンサGHC代表、農当館草の根委嘱員をはじめ、多くの地元住民や伝統衣装に身を包んだ子どもたちが出席し、喜びを分かち合いました。皆さんからは、日本政府への大きな感謝の気持ちが述べられていました。
コバリマ県は、東ティモールの中で最も南西に位置する県であり、首都ディリから南へ車で約6時間、山岳地帯を超えたその先に位置します。コバリマ県ズマライ準県一帯は、当国の主要河川の1つモラ川流域に位置し、比較的土壌が肥沃で、降水量も豊富なことから、独立前から稲作地として有望視されていました。しかし、独立前後の騒乱を経て農業インフラは甚大な被害を受け、農業生産性は著しく低下しました。近年では、慢性的な水不足から、県の水田のほとんどが長年にわたり休耕田の状態で放置されています。
本案件が実施されたズマライ準県ライメラ村ベイラコ準村では、資金不足が原因で灌漑用水路の建設が取水口から総延長250mの地点で中断していました。これまで地域住民の皆さんが、土を掘削して水路を築いてきましたが、耐久性が弱く、大雨のたびに水路が崩壊していました。農業生産性が一向に上がらないために、村の人々の収入は非常に低く、慢性的な栄養不足に陥ったり、感染症に罹患する人が後を絶ちませんでした。収入が上がらないため、基礎教育課程の途中で学校を辞めざるを得ない児童も多くいました。
そこで、このような状況を改善するため、日本政府はGHCと共同し、「コバリマ県ズマライ準県における灌漑用水路拡張計画」に対して、草の根・人間の安全保障無償資金協力を通じて64,695米ドルをGHCに供与しました。
この事業により、既存の灌漑水路から新たに1kmの水路が延長され、結果約300ヘクタールの休耕地に農業用水が供給されるようになります。これにより、稲作の収穫高が増加し、農業で生計を立てている地域住民の家計の向上が期待されます。さらには、栄養不足の軽減や感染症の予防、退学する児童の減少なども期待されます。
農業・農村開発は、当国に対する日本の支援の重点分野の1つであり、さらに2010年の当国政府の国家優先課題にも「食料安全保障‐生産性向上」が挙げられるほど、農業生産性の向上は東ティモールにとって喫緊の課題です。一歩一歩着実に発展の歩みを遂げている東ティモールの国づくりがより強固なものになるよう、当館は今後も草の根レベルの支援を続けていきます。
(了)
①日本の支援により延長された灌漑用水路
②日本の支援を表すロゴマークが付けられている
③伝統的な踊りを披露する村の女性たち
④式典に集まった村の住人の皆さん
⑤式典に集まった、たくさんの村の子どもたち
(c) Embassy of Japan in Timor-Leste Avenida de Portugal, Pantai Kelapa, Dili, Timor-Leste (P.O. Box 175) Tel: +670-3323131 Fax: +670-3323130